No.14, No.13, No.12, No.11, No.9, No.8[6件]
Worksに一点、どこかに一点追加
短い話を二点追加しました。
こんなスタートダッシュで大丈夫なのか。雑すぎないか。そして息切れしないか。
まあぼちぼちやっていきます。
短い話を二点追加しました。
こんなスタートダッシュで大丈夫なのか。雑すぎないか。そして息切れしないか。
まあぼちぼちやっていきます。
近いうちに一件更新できそうです。ワーイ
最近は杉浦明平(渡辺崋山の長編小説を書いた田原出身の作家)のエッセイを読んだりしています。
杉浦明平そのものの知識とか昭和の時代背景の知識が無いのでウボェーとなりつつ、なんとなく渡辺崋山とどういう距離感の立場をとってどういう目で見つめていたのか、どうしてあんな小説になったのかがわかってきたようなわからないような。
とりあえず男女カプが解釈違いということだけはわかった。
こういうの蓄積されてきたら感想文ページも更新した方がいいですね。
書き足りないのでちまちま更新かけていくつもりではあったんですけど、ゼロから増やすばかりでなく今あるものを書き換えるべき箇所も出てくるだろうと思います。
最近は杉浦明平(渡辺崋山の長編小説を書いた田原出身の作家)のエッセイを読んだりしています。
杉浦明平そのものの知識とか昭和の時代背景の知識が無いのでウボェーとなりつつ、なんとなく渡辺崋山とどういう距離感の立場をとってどういう目で見つめていたのか、どうしてあんな小説になったのかがわかってきたようなわからないような。
とりあえず男女カプが解釈違いということだけはわかった。
こういうの蓄積されてきたら感想文ページも更新した方がいいですね。
書き足りないのでちまちま更新かけていくつもりではあったんですけど、ゼロから増やすばかりでなく今あるものを書き換えるべき箇所も出てくるだろうと思います。
サイトに載せるにはあまりにもストーリー性が無さすぎて没にしたやつ
ついでにタグもお試し #小話
↓以下から 登場人物は水野と鳥居
服喪
「お別れに参りました、水野様」
煌々と行灯の灯された部屋の隅で、鳥居耀蔵は両手をついた。上げた顔に浮かんでいるのは、彼らしいへつらうような薄ら笑いだった。
「お前にも存外殊勝なところがあるのだな」
鳥居が長い間頭を下げていたので、水野忠邦はせいぜい皮肉っぽく言ってやった。片や鳥居は笑みを深め、その顔に濃い影を作った。
「此度は長い無沙汰の非礼を詫びねばなるまい、と参上した次第にございます。何と申しましても、最期の機会にございますゆえ」
「そうだな、今生で顔を合わせるのもこれが最後だ」
水野の背後には屏風が立てられていた。向かい合う彼らの間には一対の盃が伏せられているが、二人とも手に取ろうとしない。
「よくもわしの前にぬけぬけと顔を出せたものだな。鳥居、お前には言いたいことが山とあるぞ。非礼を詫びると申すなら、しばらくそこで黙っておれ」
片膝を立てて水野は乱雑に座り直した。
「――何故、わしを裏切った」
地獄で煮えたぎる血の池のような声だった。
「江川英龍や川路聖謨と同じくらい、わしはお前に目をかけていた。お前の卓越した遂行能力を買っていた。望むことには融通を利かせ、いささか度が過ぎた専横にも目をつぶり、充分すぎるほど重用してやったはずだ」
不意に水野は畳を蹴って、鳥居の胸ぐらを掴んだ。
「何故だ。何故わしを捨てたのだ」
片手で袷を崩されながら、鳥居は平然とせせら笑った。
「やはり何一つおわかりでなかったのですね。まず一点、簡単なことです。負け犬に用はありませぬゆえ」
「鳥居!」
耳障りな音を立てて、対の盃がひっくり返った。獣の唸るような怨嗟の声をあげて、水野は鳥居に馬乗りになっていた。
「もう一つ、水野様を裏切った理由があるのですが……」
膝頭を喉元に押しつけられて、鳥居は絶え絶えに息を吸った。
「そうのしかかられては、喋るに喋れませぬな」
「知ったことか」
「しかし、なにぶん最後の機会にございます。水野様に倣って、私も胸の内を申し上げると致しましょうか」
苛立った顔で髭を扱いている水野に、鳥居は軽く目を伏せてみせる。
「――誠に、残念至極にございます。今でも夢に見るのですよ。ああ残念だ、実に口惜しい。水野様が私の家臣であればよかったのに、と」
「何を言い出すかと思えば、無礼に無礼を重ねるとはな」
水野は鼻先で嗤いながら顎をしゃくった。
「だが聞いてやろう。わしがお前の家臣であったなら、どうするつもりだったというのだ」
「もちろん、この手であなた様をお守りするのでございます」
細い眉がぴくりと跳ねる。意表を突かれて、水野は咄嗟に口が利けなかった。
「あらゆる罪を拭い、世間の糾弾からかばい、歯向かう者を片端から黙らせる。私の懐の内にあれば、誰奴にも石など投げさせませんでしたのに」
「嘘を申すな。わしの立場が軽ければ、お前はもっと早くわしを切り捨てていた。それだけのことだろう」
同朋を守り抜くだとかいった心ばえが鳥居に存在しないことは、後藤三右衛門の件でよく知っている。
「そうすることもできますが、逆もできますでしょう? 私の方が立場が強いのですから」
するりと蛇が這うように、鳥居の手が水野の袴を掴む。喉元へ突きつけられた膝を抱えて、頬を寄せるような素振りをした。
「進んで見捨てたくなどなかったのです。馬鹿げた改革を推し進めて差し上げたように、この手であなた様のことを、どうとでも転がしてやりたかった。生きる術すら私のほしいままにしたかった。誰よりも愚かで怜悧な水野様、もしあなた様のすべてが私の手の内にあれば、さぞや愉悦を覚えられたことでしょう!」
身体をわななかせて、すべての息を吐き出しきるように鳥居は言った。少し沈黙して、ぽつりと続ける。
「でも主君が落ちぶれては、見捨てる他なかった」
睨みつける水野の目を、苦しげな薄ら笑いで鳥居は見返した。
「あれ以上お側に侍っていても、何にもならなかったではありませんか。いいえ、たとえどんな位を得たところで、私の望みが満たされることなどなかった。あなた様のお側にいる限り……」
「わしに仕えることの何が不満だと申すのだ」
「一番でいたいのですよ、私は。何事につけても一等でないと、唯一人でないと気が済まないのでございます」
薄ら笑いを浮かべるばかりだった鳥居の瞳に、不意に激しい感情が揺れた。
「私が水野様を捨てたもう一つの理由は、つい今し方、ご自身がおっしゃった通り。『江川英龍や川路聖謨と同じくらい』ですって? とんだ屈辱だ、この浮気者!」
袴越しに深々と爪を突き立てて、鳥居は初めて恨みがましい目で水野を見据えた。
ややあって、水野が膝を浮かせた。追い縋ろうとする鳥居の手を蹴り払いながら立ち上がる。
「あれだけ可愛がってやっても足りぬと申すか。つくづく業突く張りよの」
「貪欲な男だからこそ、水野様は私を買ってくださっていたのでしょう?」
背を向けた水野に、勝ち誇ったように鳥居は大笑した。
「さあ、過ぎた話はこの辺りにして、盃を交わそうではありませんか」
袷を直しながら、鳥居は盃の前に座り直す。中身は既に入っていた。互いに無言で手に取る。
一息に飲み干した盃を、水野は畳に叩きつけた。
「まずい」
「そうでしょうね、なんせ」
形ばかり口をつけて、鳥居は盃の上下を返す。びしゃり、と飛び散った液体からは、何の匂いも漂わない。
「ただの水でございますから」
水野が派手に舌打ちした。
「夜が明ければわしは灰になる。親類家族に囲まれてこの世を名残惜しむつもりが、まさか最期にお前の顔を拝むことになるとは」
舌打ちを重ねて、水野は不機嫌そうに横目で背後を見やった。逆さ屏風の向こう側には白い布団が敷かれ、水野自身の亡骸が横たえられている。
「私はただ、お別れのご挨拶に参りましたまでにございます」
慇懃な態度を崩さない鳥居に、ふん、と吐き捨てるように水野は言った。
「鳥居、わしはお前を許さぬ。千代田の城から蹴落とした今でも、お前だけは決して許しておらぬ。恨むならわしが先だ。どれだけわしの念が深かったか、檻の中で思い知るがよい」
鳥居は瞠目して、それから笑い皺の中に目を埋めた。
「もったいなきお言葉。あなた様の唯一人になれるならば、裏切った甲斐もあったというものです」
「どうじゃ、今日はめぼしい出来事はあったかね」
薄い座布団の上に腰を下ろし、初老の男がそう尋ねた。座敷の一間から出ることの叶わない彼は、毎日やってくる世話係にこうして外の出来事を尋ねては、手慰みに日誌をつけているのだった。
まめなことだと内心思いながら、世話係は手元の帳面をめくる。
「大きな出来事は特に……。ああそういえば、元浜松藩主の水野侯が他界されたとの由」
閉じ込められた男の喉から微かに息が漏れた。膝に手を置いたまま、男は静かに目を閉じ、僅かに片頬を歪めた。笑っているようにも見えるその顔のまま、男はしばし微動だにしなかった。
畳む
ついでにタグもお試し #小話
↓以下から 登場人物は水野と鳥居
服喪
「お別れに参りました、水野様」
煌々と行灯の灯された部屋の隅で、鳥居耀蔵は両手をついた。上げた顔に浮かんでいるのは、彼らしいへつらうような薄ら笑いだった。
「お前にも存外殊勝なところがあるのだな」
鳥居が長い間頭を下げていたので、水野忠邦はせいぜい皮肉っぽく言ってやった。片や鳥居は笑みを深め、その顔に濃い影を作った。
「此度は長い無沙汰の非礼を詫びねばなるまい、と参上した次第にございます。何と申しましても、最期の機会にございますゆえ」
「そうだな、今生で顔を合わせるのもこれが最後だ」
水野の背後には屏風が立てられていた。向かい合う彼らの間には一対の盃が伏せられているが、二人とも手に取ろうとしない。
「よくもわしの前にぬけぬけと顔を出せたものだな。鳥居、お前には言いたいことが山とあるぞ。非礼を詫びると申すなら、しばらくそこで黙っておれ」
片膝を立てて水野は乱雑に座り直した。
「――何故、わしを裏切った」
地獄で煮えたぎる血の池のような声だった。
「江川英龍や川路聖謨と同じくらい、わしはお前に目をかけていた。お前の卓越した遂行能力を買っていた。望むことには融通を利かせ、いささか度が過ぎた専横にも目をつぶり、充分すぎるほど重用してやったはずだ」
不意に水野は畳を蹴って、鳥居の胸ぐらを掴んだ。
「何故だ。何故わしを捨てたのだ」
片手で袷を崩されながら、鳥居は平然とせせら笑った。
「やはり何一つおわかりでなかったのですね。まず一点、簡単なことです。負け犬に用はありませぬゆえ」
「鳥居!」
耳障りな音を立てて、対の盃がひっくり返った。獣の唸るような怨嗟の声をあげて、水野は鳥居に馬乗りになっていた。
「もう一つ、水野様を裏切った理由があるのですが……」
膝頭を喉元に押しつけられて、鳥居は絶え絶えに息を吸った。
「そうのしかかられては、喋るに喋れませぬな」
「知ったことか」
「しかし、なにぶん最後の機会にございます。水野様に倣って、私も胸の内を申し上げると致しましょうか」
苛立った顔で髭を扱いている水野に、鳥居は軽く目を伏せてみせる。
「――誠に、残念至極にございます。今でも夢に見るのですよ。ああ残念だ、実に口惜しい。水野様が私の家臣であればよかったのに、と」
「何を言い出すかと思えば、無礼に無礼を重ねるとはな」
水野は鼻先で嗤いながら顎をしゃくった。
「だが聞いてやろう。わしがお前の家臣であったなら、どうするつもりだったというのだ」
「もちろん、この手であなた様をお守りするのでございます」
細い眉がぴくりと跳ねる。意表を突かれて、水野は咄嗟に口が利けなかった。
「あらゆる罪を拭い、世間の糾弾からかばい、歯向かう者を片端から黙らせる。私の懐の内にあれば、誰奴にも石など投げさせませんでしたのに」
「嘘を申すな。わしの立場が軽ければ、お前はもっと早くわしを切り捨てていた。それだけのことだろう」
同朋を守り抜くだとかいった心ばえが鳥居に存在しないことは、後藤三右衛門の件でよく知っている。
「そうすることもできますが、逆もできますでしょう? 私の方が立場が強いのですから」
するりと蛇が這うように、鳥居の手が水野の袴を掴む。喉元へ突きつけられた膝を抱えて、頬を寄せるような素振りをした。
「進んで見捨てたくなどなかったのです。馬鹿げた改革を推し進めて差し上げたように、この手であなた様のことを、どうとでも転がしてやりたかった。生きる術すら私のほしいままにしたかった。誰よりも愚かで怜悧な水野様、もしあなた様のすべてが私の手の内にあれば、さぞや愉悦を覚えられたことでしょう!」
身体をわななかせて、すべての息を吐き出しきるように鳥居は言った。少し沈黙して、ぽつりと続ける。
「でも主君が落ちぶれては、見捨てる他なかった」
睨みつける水野の目を、苦しげな薄ら笑いで鳥居は見返した。
「あれ以上お側に侍っていても、何にもならなかったではありませんか。いいえ、たとえどんな位を得たところで、私の望みが満たされることなどなかった。あなた様のお側にいる限り……」
「わしに仕えることの何が不満だと申すのだ」
「一番でいたいのですよ、私は。何事につけても一等でないと、唯一人でないと気が済まないのでございます」
薄ら笑いを浮かべるばかりだった鳥居の瞳に、不意に激しい感情が揺れた。
「私が水野様を捨てたもう一つの理由は、つい今し方、ご自身がおっしゃった通り。『江川英龍や川路聖謨と同じくらい』ですって? とんだ屈辱だ、この浮気者!」
袴越しに深々と爪を突き立てて、鳥居は初めて恨みがましい目で水野を見据えた。
ややあって、水野が膝を浮かせた。追い縋ろうとする鳥居の手を蹴り払いながら立ち上がる。
「あれだけ可愛がってやっても足りぬと申すか。つくづく業突く張りよの」
「貪欲な男だからこそ、水野様は私を買ってくださっていたのでしょう?」
背を向けた水野に、勝ち誇ったように鳥居は大笑した。
「さあ、過ぎた話はこの辺りにして、盃を交わそうではありませんか」
袷を直しながら、鳥居は盃の前に座り直す。中身は既に入っていた。互いに無言で手に取る。
一息に飲み干した盃を、水野は畳に叩きつけた。
「まずい」
「そうでしょうね、なんせ」
形ばかり口をつけて、鳥居は盃の上下を返す。びしゃり、と飛び散った液体からは、何の匂いも漂わない。
「ただの水でございますから」
水野が派手に舌打ちした。
「夜が明ければわしは灰になる。親類家族に囲まれてこの世を名残惜しむつもりが、まさか最期にお前の顔を拝むことになるとは」
舌打ちを重ねて、水野は不機嫌そうに横目で背後を見やった。逆さ屏風の向こう側には白い布団が敷かれ、水野自身の亡骸が横たえられている。
「私はただ、お別れのご挨拶に参りましたまでにございます」
慇懃な態度を崩さない鳥居に、ふん、と吐き捨てるように水野は言った。
「鳥居、わしはお前を許さぬ。千代田の城から蹴落とした今でも、お前だけは決して許しておらぬ。恨むならわしが先だ。どれだけわしの念が深かったか、檻の中で思い知るがよい」
鳥居は瞠目して、それから笑い皺の中に目を埋めた。
「もったいなきお言葉。あなた様の唯一人になれるならば、裏切った甲斐もあったというものです」
「どうじゃ、今日はめぼしい出来事はあったかね」
薄い座布団の上に腰を下ろし、初老の男がそう尋ねた。座敷の一間から出ることの叶わない彼は、毎日やってくる世話係にこうして外の出来事を尋ねては、手慰みに日誌をつけているのだった。
まめなことだと内心思いながら、世話係は手元の帳面をめくる。
「大きな出来事は特に……。ああそういえば、元浜松藩主の水野侯が他界されたとの由」
閉じ込められた男の喉から微かに息が漏れた。膝に手を置いたまま、男は静かに目を閉じ、僅かに片頬を歪めた。笑っているようにも見えるその顔のまま、男はしばし微動だにしなかった。
畳む
できた!やったー!!
最初トチってCSS読み込まれなくてどうしようかと思った
最初トチってCSS読み込まれなくてどうしようかと思った
スマホで撮った写真そのまま使うとこうなるんだなあ ちょっとやり方考えないと……