いや~当初の計画では六月まで次の更新とっておくつもりだったんですけど、無限に手直ししちゃって人生に支障が出ているので踏ん切りをつけに来ました。更新ラッシュは今回で終了です。いっぱい遊べて楽しかった。ただ更新したカップリングのブームが自分の中で来ているのは確かです。どれぐらいブームかというと久しぶりに一万字書いた上にまだこんなおまけが生えるぐらい。#小話 続きを読む「これは江川どの、ご機嫌よう」「……お目付どのではありませぬか」 べったりとへばりつくような声に、江川英龍は薄く愛想笑いを浮かべた。彼の眉間に寄った皺を無視して、鳥居は江川の側にすり寄る。「近頃は江川どの、ずいぶんと水野様のお気に入りのようで。まったく羨ましいですなあ」「はあ、恐れ入ります」 江戸湾測量からこちら、鳥居はやたらと江川に絡むようになっていた。顔を合わせれば、やれ水野の覚えめでたい江川が羨ましい、自分ではとても敵わないと的外れな追従をしてくる。江川の提出した測量図だけが評価されたことが、よほど気に食わなかったと見える。はっきり言ってこの上なく鬱陶しかった。「一体どうやって水野様に取り入られたのか、是非ともご教示願いたい」 こめかみが脈打つのを感じながら、江川は努めて深い呼吸を繰り返す。「拙者は、上役の方々に気に入られるために勤めを果たしておるのではござらぬ」「それがしが上役の関心を買うことしか頭に無いとおっしゃるかな」「いや、そう申したわけでは」 ああ面倒臭い、と江川は内心舌打ちした。しかし鳥居は余裕のある笑みを浮かべている。「それがしが水野様に近しいのは事実でござるが、依怙贔屓されていると見ておられるなら、それは間違いでございますぞ。現に水野様は、それがしの意見はとんと採用なさらぬでしょう」 江川にとっても、それが不思議なところだった。何か大きなことを成す時、水野は鳥居の意見を必ず聞いている。鳥居の方が出しゃばりということもあろうが、重用しているのは間違いない。そのくせ鳥居の上申には滅多に首を縦に振らない。何故側近く控えさせているのだろうか。目付であるからというだけでは留まらない、個人的な理由があるのではないか。「……むしろ拙者には、水野様は鳥居どのをこそ可愛がっておられるように思われまする」「ややっ!」 思わず漏れた本音に、鳥居がひょいと眉を上げた。「貴殿の目にもそう映りますか。しからば安心。なあに、身の程を弁えていらっしゃるなら良いのです」 では失敬、と言い残して鳥居は去っていった。その足運びは軽く、殿中でなければ鼻歌でも歌い出しそうである。「何なのだ一体」 江川は気味悪そうに太い眉をひそめた。畳むWaveboxありがとうございます!励みになります🫶関係ないけどpixivやポイピクで大好きな二次創作にリアクションがついていると自分以外に送ったのは誰だろう……握手したい……という気持ちになります。 2024.5.6(Mon) 21:35:25 雑記
無限に手直ししちゃって人生に支障が出ているので踏ん切りをつけに来ました。
更新ラッシュは今回で終了です。いっぱい遊べて楽しかった。
ただ更新したカップリングのブームが自分の中で来ているのは確かです。
どれぐらいブームかというと久しぶりに一万字書いた上にまだこんなおまけが生えるぐらい。#小話
「これは江川どの、ご機嫌よう」
「……お目付どのではありませぬか」
べったりとへばりつくような声に、江川英龍は薄く愛想笑いを浮かべた。彼の眉間に寄った皺を無視して、鳥居は江川の側にすり寄る。
「近頃は江川どの、ずいぶんと水野様のお気に入りのようで。まったく羨ましいですなあ」
「はあ、恐れ入ります」
江戸湾測量からこちら、鳥居はやたらと江川に絡むようになっていた。顔を合わせれば、やれ水野の覚えめでたい江川が羨ましい、自分ではとても敵わないと的外れな追従をしてくる。江川の提出した測量図だけが評価されたことが、よほど気に食わなかったと見える。はっきり言ってこの上なく鬱陶しかった。
「一体どうやって水野様に取り入られたのか、是非ともご教示願いたい」
こめかみが脈打つのを感じながら、江川は努めて深い呼吸を繰り返す。
「拙者は、上役の方々に気に入られるために勤めを果たしておるのではござらぬ」
「それがしが上役の関心を買うことしか頭に無いとおっしゃるかな」
「いや、そう申したわけでは」
ああ面倒臭い、と江川は内心舌打ちした。しかし鳥居は余裕のある笑みを浮かべている。
「それがしが水野様に近しいのは事実でござるが、依怙贔屓されていると見ておられるなら、それは間違いでございますぞ。現に水野様は、それがしの意見はとんと採用なさらぬでしょう」
江川にとっても、それが不思議なところだった。何か大きなことを成す時、水野は鳥居の意見を必ず聞いている。鳥居の方が出しゃばりということもあろうが、重用しているのは間違いない。そのくせ鳥居の上申には滅多に首を縦に振らない。何故側近く控えさせているのだろうか。目付であるからというだけでは留まらない、個人的な理由があるのではないか。
「……むしろ拙者には、水野様は鳥居どのをこそ可愛がっておられるように思われまする」
「ややっ!」
思わず漏れた本音に、鳥居がひょいと眉を上げた。
「貴殿の目にもそう映りますか。しからば安心。なあに、身の程を弁えていらっしゃるなら良いのです」
では失敬、と言い残して鳥居は去っていった。その足運びは軽く、殿中でなければ鼻歌でも歌い出しそうである。
「何なのだ一体」
江川は気味悪そうに太い眉をひそめた。畳む
Waveboxありがとうございます!励みになります🫶
関係ないけどpixivやポイピクで大好きな二次創作にリアクションがついていると自分以外に送ったのは誰だろう……握手したい……という気持ちになります。